不倫相手にプレゼントしすぎると慰謝料も上がる?
不倫相手との問題
慰謝料請求
今回は,不倫をしている夫が不倫相手に対して多額のプレゼントをしたり,多額の食事をおごったりしていた場合,妻からの請求できる慰謝料の金額は上がるのかどうかと,不倫相手から「あなたのご主人,他にも不倫相手いるわよ」という反論が慰謝料の減額要素になるかについてご説明します!
不倫相手が経済的利益を得ていたこと
「愛人関係」とか「妾関係」という言葉からイメージされる典型例は,自分が女性,配偶者が男性,不倫相手が女性という場合だと思いますが,このように不倫相手が女性のケースでは,男性からお金をもらったり,プレゼントをもらったり,家を買って(借りて)もらったりと何かしらの経済的利益を得ていることが少なくありません。
では,こうした事情は,慰謝料の増額要素となるのでしょうか。
この点,法律上,夫が稼いできた給料でも夫婦の共有の財産となりますので,そのお金が不倫相手のために使われる,というのは本来夫婦で使えるはずのお金が減っているため,妻にとってマイナスなことであるのは間違いないでしょう。とはいえ,その不倫相手のために使ったお金がそのまま損害となるわけではありません。
こうした事実(不倫相手が経済的利益を得ていたこと)は,原告の精神的苦痛を増大させるものであるとして,慰謝料の増額要素となると考えられております。
裁判所もそのような事実がある場合には,慰謝料の増額要素として考慮しているようです(東京地判平成22年9月9日「被告がA(配偶者)と不貞関係を維持することにより,Aから相当額の金銭の支払や物品の贈与を受けたことがそれぞれ認められ」「Aと約5年半にも及ぶ不貞交際を自らも継続する意思を有し,これにより相応の経済的利益を得ていたものであるから,不貞行為の態様は軽いものとはいえず,…これによって原告が被った精神的苦痛は小さくない」,東京地判平成21年6月10日「本件では,Aが,被告との交際中に総額1000万円程度の支出をしていることが認められるが,仮にこれが夫婦財産を減少させる行為であり,原告の財産分与額に影響を与えることがあるとしても,その経済的不利益自体が,ただちに本件不貞行為に基づく損害といえるものではない。ただし,被告は,Aが自己と交際する中で多額の金員を支出していることを十分認識しながら交際を続けており,そのことにより,原告がさらなる精神的苦痛を被ったことも否定し得ない。その意味においては,上記事情についても,原告の慰謝料額を算定する際の一事情として考慮されるべきである。」)。
他にも不倫相手がいるとの反論
不倫相手に対して慰謝料請求をした場合,「A(配偶者)には,自分の他にも不貞相手がいる。自分はそのうちの一人にすぎない。」などと弁解をしてくることがあります。では,こうした事実は,慰謝料の減額要素となるのでしょうか。
この点,自分以外にも婚姻共同生活を破壊するような行為を行っている人物がいるので,婚姻関係が破壊された(悪化した)原因は,その不倫相手だけではないとも考えられます。
そうすると,慰謝料の減額要素と考えてもよさそうです。
こうした事実を減額要素として考慮したと思われる裁判例もあります(東京地判平成25年4月17日「A(配偶者)は,数年の間に,被告との関係を含め,複数回,女性と不貞関係になっていた。」)。
他方で,慰謝料の減額要素とはならないと判断する裁判例もあります(東京地判平成15年11月6日「▲(もう一人の不貞相手)の行為は,本件婚姻関係の破綻をもたらしたA(配偶者)の行為を,原告に対する一連の不法行為と見るとき(被告とAと▲との間には当然ながら意思の連絡はないし,原告の主観面にも明白となったのは,Aと被告との不倫行為発覚後であるが),客観的にはその一部といえるから,Aを介して,被告の行為とも共同不法行為の関係にあるものということができる。」,東京地判平成22年7月6日「被告は,A(配偶者)が他の女性とも不貞に及んでいたことを主張するが,そのことを前提としても,他の不貞相手(及びA自身)に対する原告の損害賠償請求権は,被告に対する本訴請求に係る損害賠償請求権と不真正連帯債務の関係にあるから,原告との関係で被告の責任を何ら減少させるものではなく,被告の主張を採用することはできない。」
ここで出てくる「共同不法行為」や「不真正連帯債務」とは,要するに,複数の不倫相手が一緒に(協力して)婚姻関係を破壊するような行為を行ったということです。
そして,通常,この「共同不法行為」が成立するためには,意思の連絡(2人の間で,一緒にこういうことをしようと意思疎通を図ること)が必要と考えられておりますので,それがない,こうしたケース(不倫相手同士では通常意思連絡などないでしょう。)で「共同不法行為」を認めるのは相当特殊です。
これはおそらく,“そのような弁解を認め,慰謝料を減額させるべきではない”,という価値判断に基づいたものだと思いますが,その法律構成には疑問がないとはいえません。
裁判所においても,この点は見解が定まっていないようですので,減額要素となるのか,ならないのかは判然としないのが正直なところです。
まとめ
不倫をしている夫が不倫相手に対して多額のプレゼントをしたり,多額の食事をおごったりしていた場合,妻からの請求できる慰謝料の金額は,基本的に上がると考えて良いでしょう。
また,不倫相手から「あなたのご主人,他にも不倫相手いるわよ」という反論は,慰謝料の減額要素になるかどうかは判断が分かれるところではありますが,減額要素にならないという価値判断が勝つ場合が多いように思えます。
いずれにしても,個々の事情で判断される部分ですので,詳細は専門の弁護士のご相談いただければ幸いです。
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