夫婦が破綻していたという不倫相手の反論

不倫・浮気とは?

不貞行為・違法行為

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 「これじゃ不倫っていえないの?(1)」及び「(2)」において,どのような場合であれば(どのような事情があれば)不法行為となるのかについてお話しました。

 今回も引き続き,その不法行為の成立要件のお話をしていこうと思います。

 今回は④故意・過失という要件についてお話いたします。

 

故意・過失

 

 不法行為が成立するためには,故意あるいは過失が必要です。

 故意や過失という言葉は聞いたことがある方が多いと思いますが,不倫(不貞)の場合の故意・過失の対象はどういったものなのか,何を知っていると故意が認められるのでしょうか。

 この点については,考え方が分かれています。

 まずは,①不貞行為時に,相手に配偶者がいることを知っていることであるとする考え方です(東京地裁平成24年12月9日判決,東京地裁平成25年7月10日判決等)。

 つまり,不倫(不貞)をする際に,Bが結婚していることをXが認識していれば,Xには故意があるということになります。

 

 他方で,②不貞行為時に,相手に配偶者がいることだけでは足りず,その夫婦関係が破綻していないことを知っていることであるとする考え方があります(東京地裁平成19年4月24日判決,東京地裁平成20年10月28日判決等)。

 つまり,Bが結婚していることをXが認識していても,BとAが破綻していたと考えていた場合(※)には故意がないということなります。

 

夫婦関係が破綻していると思っていたとの反論(※)

 

 では,②の考え方に従ったとして,不倫(不貞)を行ったXは,相手(B)の夫婦関係が破綻していたと思っていれば(あるいはそう主張すれば)責任を免れることができるのでしょうか。

 裁判所は,そのような反論をまず認めておりません。

 少なくとも過失はあったと認定されています。具体的に見ていきましょう。 

 例えば,XがBからAとは別居中であると聞いていたケースについて,裁判所は「Xは,Bから,Aとは別居中であると聞いていたものの,AはBとの離婚には応じず,たびたびBがA宅に帰り泊まることがあり,その間,子らの面倒を見ていることも,Bから聞いていたというのである。そして,その内容は,非監護者と未成年子との面会交流にとどまらず,夫婦が共同して未成年子の養育監護を行っている事実があることを疑わせるものというべきであるから,仮に,Xが,本件不貞行為の当時,AとBとの婚姻関係が既に破綻しているものと信じていたとしても,そう信じることについて相当の理由があったとは認めるに足りず,したがって,被告に過失がなかったとは認められないというべきである」と判断しております(東京地裁平成25年1月28日判決)。

 この裁判例は,Bから,Aが自宅に来て泊まったり,子どもの世話をしているということを聞いていたという事情から,AB間が破綻していたと認識することに関するXの過失を認めています。

 また,Xが,Bから長期間にわたって夫婦仲が悪いと聞いていたと主張したケースについて,裁判所は「Xは,Bから,長期間にわたってAとの不和が続いていた旨を聞かされたこと,Bが心筋梗塞を患ったことから,Bに対して同情の念を抱いた旨主張し,その旨の供述をする。しかしながら,婚姻関係にある一方当事者が,異性に対して自らの家庭が不和であることを告げたとしても,そのことが真実であるとは限らないのであり,Xが,そのようなBの言い分を無批判に受け入れたということもにわかには信用できない。」と判断しております(東京地裁平成25年12月17日判決)。

 この裁判例は,Bから夫婦仲が悪いと聞いたことを,何らの疑いも無く信じたこと自体に問題があるとして,Xの過失を認めております。

 さらに,Xが,Bから「Aと離婚する」と聞いており,Bの友人からも「ABの夫婦仲がとても修復できるような状態ではない」と聞いていたケースにおいて,裁判所は「Xは,Bから離婚を考えていることを聞き,Bとの共通のダーツ仲間からも,BとAとの夫婦関係が修復できるような状態でないことを聞いていたという状況下で,Bが,Aと「別れる。」,「必ず離婚する。」と言明したので,Xは,BとAとの夫婦関係は完全に破綻しており,離婚してもおかしくない状態に至っていると信じて疑わなかったと主張するが,Xの主張する状況において,XがXの主張のとおり認識していたことを前提としても,Xとしては,Bの言葉から,AとBとは,別れておらず,離婚もしていないと認識していたものであり,AとBとの婚姻関係が破綻していたと認識していたとまではいえず,そのおそれがあるという程度の認識で,破綻していることを希望していたにすぎないというべきであるから,被告は,原告に対して,不貞行為による不法行為責任を負うというべきである。」と判断しております(東京地裁平成25年9月27日判決)。

 この裁判例は,Bから「離婚する」と聞いていたり,周囲の人間から「夫婦仲が修復不可能」と聞いていても,実際にはAB夫婦が離婚していないことを認識していたとして,Xに過失を認めております。

 このように,裁判所は,Xの認識について,かなり厳しく判断をしており,少なくとも過失はあったという方向で認定しています。

 さらにいえば,上記①②いずれの見解に従ったとしても,結果的に,裁判所はほとんどのケースで,不倫相手の故意,少なくとも過失はあったと認定しています。

 故意・過失が否定されるケースはそう多くありません。

 では,どのようなケースであれば,Xの故意・過失が否定されるのでしょうか。

 

Xの故意・過失を否定したケース

 まず,Xがお見合いパーティーでBと知り合い,BがXとの交際中,Xに対し,氏名,年齢,住所及び学歴等を偽り,一貫して独身であるかのように装っていたというケースにおいて,裁判所は「既に認定した事実経過(取り分け,Xは,通常は独身者が参加すると考えられているお見合いパーティーでBと知り合ったこと,Bは,Xとの交際期間中,Xに対し,氏名,年齢,住所及び学歴等を偽り,一貫して独身であるかのように装っていたこと等)に照らすと,通常人の認識力,判断力をもってしてはBが婚姻していることを認識することは困難であったというべきであり,Xが,Bの実母に会って同人からBが既婚者であることを聞かされるまでの間,Bが独身であると信じて交際を続けていたことについて,過失があると評価することはできない。」と判断しております(東京地裁平成23年4月26日判決)。

 また,Bが,ホステスとして深夜まで勤務し,Xと深夜に何度も電話するなどし,Xに対しては前の夫とは離婚して現在は独身であるなどと述べており,XがBの自宅を訪れたことがなかったというケースにおいて,裁判所は,「Bが,ホステスとして深夜まで勤務し,Xと深夜電話で会話するなどし,Xに対して前夫と離婚して現在は独身であるなどと述べていたこと,XがBの自宅を訪れたことはなかったことなどからすると,XがBと交際していた当時同人に夫がいないと信じたことに過失があったとはいえないものというべきである。」と判断しております(東京地裁平成24年12月25日判決)。

 これらは,Bが結婚していないと偽り,Xを信じさせているケースであり,様々な事情からしても,通常結婚しているとは気付けない(疑うことができない)レベルにあるという点に特徴があります。

 

まとめ

 

 以上からすると,よほどのケースでない限り,故意,少なくとも過失は認められることになります。

 つまり,不貞行為に基づく慰謝料請求をすると,「結婚していると思わなかった」とか「夫婦関係がうまくいっていない(破綻していた)と聞いていた」との反論がなされることがよくありますが,それらはほとんどのケースで認められない(少なくとも過失が認められる)ということです。

 もっとも,(これはまた別の機会に詳しくお話しますが,)Xの主観が故意である場合と過失にとどまる場合とでは,支払うべき慰謝料額に差が生じますので,Xに過失しか認められない場合には慰謝料額は低く抑えられてしまう可能性があります。

 

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