結婚するとどうなるの?①
パートナーとの問題
結婚・婚姻関係財産分与離婚
結婚(婚姻)したことにより,夫になるもの,妻になるもの,それぞれにどのような効果が生じるのか。この点は,離婚のご相談等にも関連する重要な点でも含まれますので,2回に分けてご説明しようと思います。
婚姻の効果
婚姻すると,例えば,次のような法律上の効果が発生します。
①夫婦同氏
②同居・協力・扶助義務
③成年擬制
④夫婦間の契約取消権
⑤貞操義務
⑥婚姻相手の親族と親族関係(姻族)になること
⑦配偶者としての相続権が生じること
⑧遺族固有の慰謝料請求権が生じること
⑨婚姻を解消するには,離婚手続を踏むことになること
⑩夫婦財産制(婚姻費用の分担,日常家事債務の連帯責任等)
このうち,①から④については,民法において「婚姻の効力」として定められておりますので,今回は,この①から④について具体的にみていきましょう。
夫婦同氏
現行民法においては,夫婦は,婚姻の際に,夫または妻の氏を夫婦共同の氏として選択して,称することとされています(民法750条)。例えば,夫:「佐藤」さんと,妻:「鈴木」さんが結婚する場合,結婚後は二人とも「佐藤」か「鈴木」の氏を称することになるということです。
これは世間的にもよく知られている結婚の効果(イメージ)でしょう。
なお,この点については,違憲だという意見があり,違憲訴訟などが行われておりますが,現在はまだ違憲とまではされておらず,当面は夫婦同氏とされるでしょう。
同居・協力・扶助義務
我が国の民法は,夫婦に対して「同居し,互いに協力し扶助する義務」があるとしています(民法752条)。これも婚姻の効果の一つです。
①同居義務
まず,夫婦は同居する義務(一緒に暮らす義務)があるとされています。
そのため,何らの理由もなく夫婦の一方が同居を拒否するような場合,他方の配偶者は同居の審判を申し立てることができます(家事事件手続法39条,同法別表第二の1項)。
もっとも,夫婦間には様々な事情がありますので,実際に(具体的に)同居義務を負うかどうかはその夫婦の事情によって決まります。
また,仮に同居を命ずる審判が出されても,同居を強制的に実現することはできません(強制執行することはできません)。事の性質上,無理矢理に実現させても意味がなく,あくまで本人の自由意思(任意)で行うことが大事だからです。
②協力義務
夫婦で共同生活を行う上で,その生活の分業を行う義務です。
なお,これも上記と同様に任意に履行すべき義務なので,強制させることはできません。
③扶助義務
これは②と違い,夫婦間の金銭的な協力の義務です。
金銭的な協力ですので,強制的に履行させることが可能です。
この点については,後に触れる婚姻費用分担義務(婚姻家族の共同生活を維持するのに必要となる費用を夫婦で分担する義務・民法760条)との関係が問題になりますが,意味合いとしては重複するものですので,多くの場合は婚姻費用分担義務の問題として処理されることになります。
また,夫婦間で,片方が所有する不動産にもう片方の配偶者を住まわせているということもあります。夫婦が円満なうちは良いのですが,夫婦仲が悪化した場合に,「出ていけ」と言い出すこともあります。具体的な事案にもよりますが,別居中の夫が夫所有の不動産に居住する妻に対して明渡請求をしたケースで,この扶助義務(民法752条)を根拠に居住し続ける権利があると判断した裁判例もあります(東京地裁昭和45年9月8日判決)。
成年擬制
民法上,未成年者が婚姻したときには,成年に達したものとみなされます(民法753条)。これも婚姻の効果の一つです。
未成年者は,未成熟であるため,基本的に一人で財産行為をすることができず,保護者の同意が必要とされています(民法5条)。しかし,それでは新たに家族をもって生活をしていく上で不都合がありますので,婚姻をした未成年者は,社会生活に必要な精神能力が成熟していると考えられているのです。
また,この「成年擬制」はあくまで民法上の問題であり,公職選挙法,労働法,他の法律上は未成年者としての扱いをされます。例えば,飲酒や喫煙に関しては,婚姻をしても禁止されたままです。
なお,婚姻をして成年擬制の効果が生じた者が,未成年のうちに離婚をした場合などにおいても,成年擬制の効果は消滅しないと考えられています。
夫婦間の契約取消権
「夫婦間でした契約は,婚姻中,いつでも,夫婦の一方からこれを取り消すことができる」とされています(民法754条)。
例えば,夫から妻に対して「俺の車をあげる」と言っていても,婚姻中であればいつでも「やっぱりやめた」とすることが可能です。
この制度(規定)は,通常,契約をすると法によって強制することが可能ですが,夫婦間(家庭内)に法が介入することは望ましくないとの考え(すなわち,夫婦間の契約に法的な拘束力を持たせるべきではないと考えられること)や,他方の配偶者のことが好きで好きでたまらず契約をしてしまったり,相手の威圧によって契約をする場合など,十分に意思決定をする自由がないままに契約をする場合が多いとの想定に基づくものです。
そのため,夫婦間で契約をした時に既に婚姻が破綻している場合などには,上記のような考えが当てはまらないため,民法754条による取消しはできないとされています(最高裁昭和33年3月6日判決)。また,契約時は婚姻が破綻していなかったケースで,破綻後にその契約の取消しを主張した場合においても,最高裁は,民法754条の「婚姻中」とは「形式的にも,実質的にもそれが継続していることをいう」と述べ,契約の取消しを否定しています(最高裁昭和42年2月2日判決)。
なお,この点と関連して,数年後の離婚に関して,離婚協議書を現段階で作っておくことの意味,効果については難しい問題があるので,また,改めてご説明したいと考えております。
まとめ
不倫の問題が生じると,そこから離婚の問題につながることが多いです。そのとき問題となるのが財産分与であり,そのときは上記の各理論を中心に交渉していくことになりますので,これらの点の理解を深めるとともに,分からないことは弁護士に相談されることをおすすめ致します。