そもそも「結婚」って何?

パートナーとの問題

結婚・婚姻関係離婚

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本サイトは「弁護士が教える不倫問題」ですので,基本的には,「不倫」→「離婚」にまつわるお話をしていくことになりますが,今回はその前提である「結婚」(「婚姻」)についてお話していこうと思います。

不倫,離婚のケースのほとんどが,有効に結婚し,婚姻関係が継続している夫婦のケースなので,あまり問題になるケースは少ないのですが,例えば,結婚はしていないが「婚約」している場合,また婚姻届は出しているが相手に勝手に出されてしまっている場合,生まれてくる子どもに「嫡出子」としての地位を与えるための偽装結婚である場合など,そのパートナーとの関係が適法,有効なもの,法的保護に値するものなのかが問題になるケースもあります。

 

婚姻の要件

 

結婚する,入籍する,というと「婚姻届を出す」ということを想像する方が多いかと思います。

では,単純に「婚姻届」を役所に出せば,それだけで結婚になるのでしょうか。

実際には,ほとんどの場合,それで問題なく婚姻は成立しておりますが,法律上,婚姻が成立するためには次の3つの要件が必要になっています。

 

①届出

②当事者の婚姻する意思

③婚姻障害がないこと

 

①は形式的な要件,②③は実質的な要件になります。

 

そして,①か②の要件が欠ける場合には,婚姻は“無効”となり(民法742条),③の要件が欠ける場合には,基本的に婚姻を“取り消す”ことができます(民法744条)。

 

以下で,少し具体的に見ていくことにしましょう。

 

届出

 

届出の方法ですが,「届出は,当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で,又はこれらの者から口頭で,しなければならない。」と定められています(民法739条2項)。

この「~が署名した書面」というのが,「婚姻届」ということになります。

口頭で届出をする場合には,当事者双方(夫となる人,妻となる人)のほか,2人以上の証人となる人全員が役所に出頭しなければなりません。

他方で,書面の場合は,当事者と証人が署名・捺印した書面さえ作れば,当事者が直接提出しなくても,誰か代わりの人や郵送で提出をしても構いません。

通常は,この書面(婚姻届)による場合がほとんどなので,当事者の一方が相手の了承無しに,婚姻届を提出してしまうリスクがあり,そのための「不受理届け」という制度があるということになります。

 

当事者の婚姻する意思

 

民法上,この「婚姻する意思」を要件とすることを明示した規定はありませんが,婚姻する意思のない婚姻を無効とする規定がありますので,この「婚姻する意思」は婚姻の当然の前提(要件)であると考えられています。

そして,この「婚姻する意思」とは,単に婚姻の届出をする意思だけでなく,真に夫婦関係を形成する意思を有していることを指します。

例えば,「生まれてくる子どもに「嫡出子」としての地位を与えるため,とりあえず婚姻届だけ出しておこう」という考えでは,この「婚姻する意思」がないとして,その婚姻は無効ということになります(最高裁昭和44年10月3日判決参照)。

なお,細かいことですが,この「婚姻する意思」は,婚姻届を作成したときだけなく,その届出が受理されるときにも必要とされています。

 

婚姻障害がないこと

 

婚姻障害は,例えば,次のものになります。

 

①婚姻適齢

②未成年者の婚姻に対する父母の同意

③重婚の禁止

④再婚禁止期間の婚姻の禁止

⑤近親婚の禁止

 

②の場合を除き,この各条項(禁止)に触れる場合には,婚姻を取り消すことができます(民法743条)。なお,取り消すことができるのは,各当事者やその親族,検察官(要するに,国)などです(民法744条)。

 

 

①婚姻適齢

男性は18歳,女性は16歳にならなければ婚姻をすることはできません(民法731条)。

これを法律上,婚姻適齢といいますが,これを満たさない婚姻は取り消すことができます。

 

②未成年者の婚姻に対する父母の同意

婚姻適齢は上記のとおりですが,仮に婚姻適齢に達していても,未成年者は必ずしも十分な判断能力を有していないため,婚姻について「父母の同意」が必要とされています(民法737条)。

父母の一方が同意しないときや,一方が知れないとき,死亡したとき,意思表示ができないときは父母のうちの一方の同意で足りるとされています(民法737条2項)。

そして,この「同意」は,婚姻届に父母が同意する旨記載するか,別途同意書を提出する方法が多いです。

もっとも,仮にこの同意がなく婚姻届が受理されてしまった場合にも,婚姻を取消すことはできません。これが他の制度と大きく異なるところです。

 

③重婚の禁止

我が国においては,一夫一婦制をとっているので,配偶者のある者は,重ねて婚姻をすることはできません(民法732条)。

通常は,役所において重婚でないことが確認されてから婚姻届を受理するため,役所の方の見落としで重婚が生じることは稀です。

重婚が生じるのは,協議離婚後に再婚したケースで,離婚が無効あるいは取り消された場合などが典型でしょう。

この場合には,婚姻を取り消すことができます。

 

④再婚禁止期間の婚姻の禁止

現行民法では,女性は,前婚の解消または取消しの日から6ヶ月を経過した後でなければ再婚を禁止することはできないとされています(733条1項)。

もっとも,この条項は昨年に最高裁で違憲の判断がされていますので,今後法改正されることになるでしょう。

 

⑤近親婚の禁止

日本においては,a.直系血族の間の婚姻(例:父母と子),b.3親等内の傍系血族の間の婚姻(例:兄弟姉妹間,叔父と姪等),は禁止されています(民法734条1項)。

また,倫理上の理由から,直系姻族の間の婚姻(例:妻からみて夫の父・祖父,自分(夫)からみて子・孫の妻)も禁止されております(民法735条第1文)。

さらに,同じく倫理上の理由から,養子,その配偶者,養子の直系卑属(子・孫など),その配偶者のグループに属する者と,養親とその直系尊属(親・祖父母など)のグループに属する者との間の婚姻は禁止されています(民法736条)。

 

まとめ

 

不倫(不貞)の問題は,その慰謝料請求を見ても,「婚姻関係の破壊」という要素が重要であり,必ずこの婚姻関係というものを前提に話が進みますので,そういう意味でも,正確に結婚(婚姻)の意味や要件を理解しておくことは大切なことだと考えております。

 

 

 

 

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